<1月29日の説教から> 『ゴルゴタにて』 ヨハネによる福音書19章16節b~27節 牧師 三輪地塩 「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」と十字架の上に罪状書きされた言葉 (文字)が重要である。これはラテン語では 「IESUS NAZARENUS REX IUDAEORUM」であり、頭文字4つを取って 「INRI」となる。イエスの十字架を描く絵画や映画などでは、こう書かれた 看板が掲げられるのを目にするだろう。「ナザレのイエス」は、当時沢山いた 「イエス」という名に、町の名「ナザレ」を付け、バラバ・イエスでも バル・イエスでもなく十字架に掛かったのは「ナザレのイエス」であると 個人を特定をしている。「ユダヤ人の王」とはイザヤ書53章の「主の僕」を 想起させる弱々しさの象徴である。 しかしヨハネ福音書は、ラテン語以外にギリシャ語とヘブライ語の表記も 掲げられていたとしており、これは実は大変重要である。 ギリシャ語では 「Ἰησοῦς ὁ Ναζωραῖος ὁ Bασιλεὺς τῶν Ἰουδαίων」 (イエスース・ホ・ナゾーライオス・ホ・バシレウス・トーン・イウーダイオーン)と書かれていたと 思われる。注目すべきはヘブライ語であり、恐らく、 ישוע הנצרי מלך היהודים (イェシュアー・ハー・ノツリー・ウーメレク・ハー・イフーディーム) と書かれていたと 考えられる。イェシュアーの頭文字はアルファベットで「Y」に相当し、 「ハーノツリー」は「H」、「ウーメレク」は「W」、 「ハーイフーディーム」の頭文字は「H」に相当する。 これらを合わせると「YHWH」となり、読み方は「ヤハウェ」=「主」 となる。主イエス・キリストの「主」「Lord」である。つまり、ラテン語で 「INRI」と書かれていたあの罪状書きは、キリストの弱々しい姿の象徴であ り、無残な姿を象徴するものであったが、これをヘブライ語にすると、 口に出して読む事さえも躊躇われるほどの聖なる呼び名「YHWH」 (ヤハウェ)を表し、この十字架の人が「弱々しく捨ておかれる犯罪者」 ではなく「主にして聖である、メシア(キリスト)なのだ」と言い表わして いるのである。この「主なる方」によって救いは到来したのである。 |