2025.5.4 週報掲載の説教

2025.5.4 週報掲載の説教

<2025年3月2日の説教から>

『真理はあなたたちを自由にする』

ヨハネによる福音書8章31節〜38節

牧師 鈴木美津子

あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。(32)」「真理」とは、主イエスご自身のことである。ヨハネ福音書では「真理」という言葉を24回使用しているが、イエス・キリストの救いの御業との関係で使われていることがわかる。つまり、ヨハネ福音書が言う「真理」とは、イエス・キリストの十字架そのものであるということである。「真理」=「十字架」と言っていいほどに両者は分かち難く結合しているのである。すなわち、「真理はあなたたちを自由にする」とは、「イエス・キリストの十字架はあなたたちを自由にする」と言い換えることができるのである。私たち罪人に示された神の真理、それは「イエス・キリストの十字架」に集約され、この十字架こそが「真理」の土台であり、あらゆる真理はその上に立てられるものに過ぎないのである。

そして、もう一つ重要な言葉が、「自由にする」である。意外なことに、共観福音書にはこの言葉はみられない。ヨハネ福音書においてもこの「自由」という言葉が使われるのも、この箇所だけである。だからこそ、ここで宣言されている「真理はあなたたちを自由にする」という言葉が重大で、しかも非常に鋭利なものとしてこの福音書全体を支えているのである。さらにこの「自由にする」の時制は未来形である。「やがてあなたたちはキリストによって自由になるであろう」。つまり、主イエスが、「真理はあなたたちを自由にする」と言われた時、主イエスの周りにいた主イエスを信じた多くの人々は、誰一人自由ではなかったのだということを示しているのである。この「自由にする」という言葉は同時に「解放する」と訳すこともできる。奴隷制度が普通にあったこの時代においては、特に「自由にする」の反対は「奴隷になる」という状態であった。つまり、主イエスを信じた多くの人々は、この時点で全て奴隷である、と主イエスが言われたも同然だったのである。この主イエスの宣言に腹を立てたユダヤ人たちが、ここから主イエスに反論していくのである。