2017.01.22の説教から

<1月22日の説教から>

『民衆のシュプレヒコール』
ヨハネによる福音書19章8節~16節a
牧師  三輪地塩
 この時彼らが叫んでいた「殺せ、殺せ」というのは、悲惨な出来事を予測させる言葉である。まさに我々人間そのものをを象徴するかのような、悪と憎しみに満ちた要求である。ここにはキリストヘイトが示すのは、人は憎しみに先導され、憎しみに我々の目は眩み、憎しみと殺意が我々の原動力になってしまうことである。残念な事に、善意や、愛の力に勝って、我々人間、はヘイトの力、悪の力、敵意の力に屈してしまう、あるいは、屈し易いと言わねばならない。
 2017年になり、我々人類は大きなチャレンジを受けている。憎悪と偏見と蔑視に扇動される人間の姿が世界各地で確認されているからだ。ヨハネ福音書は、このような、新しい時期を迎えた我々に、今日の箇所を示す。「殺せ、殺せ」と一斉に叫ぶユダヤ人の言葉は、ギリシャ語の原文では「アローン、アローン」である。
「アローン」とは、「殺す」「片づける」「取り除く」という意味の「アイローン」の命令形。
「殺せ、殺せ」と言い、神の子イエスを十字架に架けようとしている。殺してしまって、
この厄介な「神の子を自称する者」を「取り除いて」しまおう、という民衆の心理がこの言葉に示される。
 しかし我々は、ヨハネ福音書1章29節の、洗礼者ヨハネの言葉「ヨハネは、自分の方へイエスが来られるのを見ていった。見よ、世の罪を取り除く神の子羊だ」に
注目しなければならない。「この世の罪を取り除く」、と宣言されたキリストは、
自分自身が取り除かれるシュプレヒコールと共に人類の罪を取り除かれたのであった。