2023.7.9 の週報掲載の説教

2023.7.9 の週報掲載の説教
<2023年5月14日説教から>

神の憐れみの器
ローマの信徒への手紙9章19節~29節

牧 師 鈴木美津子

神はわたしたちを憐れみの器として、ユダヤ人からだけでなく、異邦人の中からも召し出してくださいました。(24)」

「神の憐れみの器」とは「神の憐れみの対象となる人々」を意味し、イエス・キリストを信じるキリスト者のことを示している。「神の怒りの器」とは、「神の怒りの対象となる人々」を意味し、イエス・キリストを信じないすべての人々、特に、神の民でありながら、イエス・キリストを拒み続けるイスラエルの人々のことを示している。

異邦人に対する神の憐れみは、神の民でない者を神の民として召し出すという仕方で表された。しかし、元々の神の民であるイスラエルについては、神の民として残す、保持するという仕方で、神の憐れみは表される。もし、神が憐れみをもってイスラエルを取り扱ってくださらなければ、イスラエルは神によって滅ぼされたあの創世記のソドムとゴモラと同じようになっていた。しかし、神はイスラエルを憐れみ、残りの者を備えてくだったのである。この「残りの者」とは、捕囚から帰って来る民のことを指していた。それがいつしか、神によって残された、真の神の民イスラエルを指すようになった。パウロは、その残りの者こそが、ユダヤ人でイエス・キリストを信じた者たちであると言うのである。多くのユダヤ人がイエス・キリストを拒み続けているが、その中からもイエス・キリストを信じる者たちが起こされた。そして、そこにパウロは神の憐れみを見ている。

ユダヤ人であっても、異邦人であっても、イエス・キリストを信じて神の民とされることは、一方的な神の憐れみによる。それゆえ、神の栄光は、イエス・キリストの教会を通して、この世界に示される。なぜなら、神の栄光は、神の恵みと憐れみによって示されるからである。私たちは神の恵みと憐れみによってイエス・キリストを信じ、真の神の民イスラエルとされた。そうであるから、神の栄光は私たちによって示される。イエス・キリストを信じて神の民とされた私たちは、神の憐れみの器であると同時に、神の栄光を現す器でもある。

神が私たちを選んで「神の憐れみの器」としてくださった。この恵みの重さは無限で推しはかることはできない。だからこそ、私たちはこの計り知れない恵みに感謝して、なお一層神を畏れて御前に謙るべきではないだろうか。